【詳細①】時刻の基準:UTC、日本標準時、うるう秒

1秒の長さの定義

 NICTの資料によると、1秒の長さは、1967年に原子の放射の周波数にもとづく定義に改められました。現在の定義は、セシウム133原子の特定の状態の間の遷移に対応する放射の、9,192,631,770周期の継続時間です [T2]。
 RFC 3339も同じ定義を載せています [T1]。昔のように、地球の自転や公転にもとづく定義ではありません。

UTC(協定世界時)とは

 UTCは、原子時計にもとづく時刻の体系を、地球の自転にもとづく時刻(世界時)に合わせるように調整したものです [T2]。
 RFC 3339は、UTCをBIPMが維持する時刻と説明しています [T1]。

 インターネットでは、世界共通の基準としてUTCが使われます。
 RFC 3339は夏時間のルールが複雑で、地域の法律によって予測できない時期に変わりうるため、本当の意味での相互運用性はUTCを使うのが最も良い、と述べています [T1]。

日本標準時(JST)

 NICTは、日本標準時を決定・維持・供給する機関です。
 日本標準時(JST)は、日本が東経135度にあるためUTCより9時間進んでいます [T2]。厳密には、日本の東と西で時刻の差があるはずですが、東経135度の時刻を日本全体の標準時として一律に使っています [T2]。
 日本標準時は、標準電波(JJY)、インターネットのNTPサービス、電話回線を使ったサービスなどで配信されています [T2]。

 UTCに9時間を足すとJSTになります。
 例えばUTCの0時は、日本時間の午前9時です。「ログが9時間ずれている」場合、UTCのまま記録されたログを、日本時間として読んでいる(またはその逆)可能性がまず疑われます。

注記:「ログが9時間ずれている原因は、まずUTCとJSTの取り違えを疑う」という点は、
   JSTがUTC+9時間であることから導いた実務上の目安です。
   NICTの資料に、この記述はありません。

うるう秒:1日が61秒になる日

 地球の自転の速さは、潮汐の摩擦などで変わります。そのため、原子時計にもとづくUTCと地球の自転にもとづく時刻(UT1)との差が、少しずつ開きます。
 そこで、UTCに1秒を足したり引いたりして、差が0.9秒以上にならないように調整しています。この1秒が「うるう秒」です。
 うるう秒の調整は1972年から始まり、2017年までに27回行われました。いずれも1秒を足す調整でした。その結果、UTCは国際原子時(TAI)に対して37秒遅れています [T2]。

 うるう秒が入る日は通常、UTCの6月30日か12月31日の最後に、「23:59:60」という存在しない(普段は存在しない)時刻が入ります。RFC 3339は、この「60秒」をそのまま書ける形式にしています。例えば、1990年末のうるう秒は、「1990-12-31T23:59:60Z」と書きます。
 うるう秒は、世界中で同じ瞬間に起こります。そのため、アメリカの太平洋標準時(UTC-8)でうるう秒は、「1990-12-31T15:59:60-08:00」と書かれます [T1]。

 日本時間でUTCの23:59:60にあたる瞬間は、午前8時59分60秒です。このずれは、UTCとの時差9時間によるものです。

注記:日本時間の「午前8時59分60秒」という書き方は、RFC 3339の例(UTC-8での書き方)と
   9時間の時差から導いたものです。
   NICTの資料でこの例そのものを確認したわけではありません。

うるう秒は予測できない

 RFC 3339は、うるう秒は遠い将来を予測できず、IERS(国際地球回転・基準系事業)が数週間前に知らせる、と説明しています。
 そのため、うるう秒の挿入が発表されるまでは、うるう秒を含む時刻をアプリケーションが生成してはいけない、とされています [T1]。

うるう秒の将来:なくす方向へ

 BIPMの決議(2022年のCGPM決議4)は、うるう秒の問題を次のように整理しています。

 デジタルネットワークや衛星測位の運営者がうるう秒を取り入れる方法は、事業者ごとにバラバラで、統一された標準に従っていない。さらに、地球の自転の観測から、史上初となる「1秒を引く」うるう秒(負のうるう秒)が必要になる可能性があり、その挿入はこれまで想定も試験もされていない [T3]。

 そこでこの決議は、UT1とUTCの差の許容される最大値を2035年までに、またはそれより前に大きくすると決めました。今後は、UTCの連続性を少なくとも100年間保てるような新しい最大値の提案と、2035年までの実施計画を作り、2026年の次回の会議(第28回CGPM)で合意する、としています [T3]。つまり、うるう秒はなくす方向で調整が進んでいます。

 2025年の国際委員会(ICG)の資料は、2026年のCGPMで新しい許容値と適用日が決まる見通しであること、そして負のうるう秒を避けるために、BIPMなどが連続的なUTCの実施日を前倒しすることを提案していることを伝えています [T4]。

注記:2026年のCGPMで、実際に何が決まったのか、いつからうるう秒がなくなるのかは
   この記事の時点では確認できていません。
   最新の決議は、BIPMの公式サイトをご確認ください。

発注の前に確認したいこと

  • システム内部の時刻は、何を基準にしているか(UTCか、日本時間か)
  • 複数のサーバーや機器の時計を、NTPなどで日本標準時やUTCに合わせているか
  • うるう秒が入る日(または、将来なくなる日)に、システムがどう動くか、ベンダーに確認しているか

注記:この3点は、各資料の内容から整理した確認項目です。
   資料がこの形のチェックリストを示しているわけではありません。

参照元

[T1] IETF, RFC 3339: Date and Time on the Internet: Timestamps(2002年。RFC 9557により更新) — https://datatracker.ietf.org/doc/html/rfc3339

[T2] NICT(情報通信研究機構), 日本標準時グループ パンフレット — https://www.nict.go.jp/pamphlet/TS_j-panf.pdf

[T3] BIPM, Resolution 4 of the 27th CGPM (2022): On the use and future development of UTC — https://www.bipm.org/en/cgpm-2022/resolution-4

[T4] ICG(GNSS国際委員会), Recommendation C(ICG-19, 2025年) — https://www.unoosa.org/documents/pdf/icg/2025/ICG-19/ICG-19_WG-D_Recommendation_C_.pdf

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