RAGとは
RAG(ラグ)は、Retrieval-Augmented Generation(検索で補強した文章生成)の略です。
AIが、答える前に外部の資料から関連する部分を探し、それを参考にして答えを作る仕組みです。社内の規程やマニュアルに基づいて答えるチャットボットでよく使われています。
元になった2020年の研究論文は、AIが学習で覚えた知識(モデルの中の記憶)に、外部の資料を検索して組み合わせる方法を提案しました。その結果、より具体的で、事実に即した文章を作れたと報告しています [S6]。
デジタル庁のガイドラインは、RAGを「外部のデータベースから得た知識に基づいてAIに回答させ、知識に即した回答にしたり、追加の学習なしで知識を広げたりする手法」と説明しています [S12]。
RAGの大まかな流れ
Anthropicの解説によると、一般的なRAGは次の流れで動きます [S7]。
- 資料を、小さな断片(チャンク)に分ける
- 断片を、意味の近さを数字で表したデータ(埋め込み、ベクトル)に変換して保存する
- 質問が来たら、意味が近い断片を探す。キーワードの一致を重視する検索方式(BM25)を併用することもある
- 見つけた断片を、質問と一緒にAIに渡して、答えを作らせる
RAGの弱点:断片が「前後の文脈」を失う
資料を断片に分けると、ひとつの断片だけでは何の話かわからなくなることがあります。
Anthropicは、各断片の前に、その断片の背景を説明する短い文を加えてから保存する方法(Contextual Retrieval)を紹介しています [S7]。
同社のテストでは、探しても見つからない失敗が上位20件の中で5.7%から3.7%に、BM25との併用で2.9%に減りました(約49%の減少)。さらに結果の並べ替え(リランキング)を加えると、約67%減ったとされています [S7]。
注記:上の数字は、Anthropicが行ったテストの結果です。
資料の種類や量が変われば、多少は結果も変わると思われます。
正確な情報が必要であれば、自分たちの資料で実際に試してみることをお勧めします。
RAGを使っても、誤りも攻撃も、ゼロにはならない
OWASPは、RAGが「検索した信頼できる情報にもとづいて答える」ことで、ハルシネーションを減らす対策になると説明しています [S3]。
一方で、RAGや追加学習は「出力を関連性の高い正確なものにするが、プロンプトインジェクション(詳細③)を完全には防げない」という研究結果がある、とも書いています [S1]。
また、RAGで使う資料が改ざんされると、その内容がAIの答えを変えてしまいます。OWASPは、RAGが参照する文書を攻撃者が書き換え、AIに誤った答えを出させる例を挙げています [S1]。
発注側が確認したいこと(デジタル庁の調達チェックシートより)
デジタル庁の調達チェックシートには、RAGを使うシステムを調達するときの確認項目が書かれています [S12]。
- 権限:RAGで閲覧権限のある情報を使う場合、検索先のデータへの参照権限を、利用者や役割ごとに適切に設定する
- 個人情報:検索先に個人の情報が含まれる場合、不適切な個人情報が出力されないよう制御する
- 検索の精度:必要な水準の検索精度を確保する。検索結果と出力の関連性・一貫性も測る
- 資料の正しさ:検索の対象にする資料と評価に使う正解データが、事実に基づいているかを確認する
契約で決めておくこと
契約チェックシートでは、RAGを含むシステムの納品物について次の点が挙げられています。
納品物は、データベースが中心になることが多いですが、関連するプログラムも成果物に含めるかを決めておく、という内容です。
具体的には、資料をRAG用のテキストに変換するプログラム、テキストを分割するプログラム、ベクトルに変換するプログラムです。含めるのか、WebAPIなどの機能として使わせるのか、権利は誰のものか、使い方はどうするか、を契約に盛り込むことが望ましいとされています [S12]。
参照元
[S1] OWASP Gen AI Security Project, LLM01:2025 Prompt Injection — https://genai.owasp.org/llmrisk/llm01-prompt-injection/
[S3] OWASP Gen AI Security Project, LLM09:2025 Misinformation — https://genai.owasp.org/llmrisk/llm092025-misinformation/
[S6] Lewis et al., Retrieval-Augmented Generation for Knowledge-Intensive NLP Tasks (arXiv:2005.11401) — https://arxiv.org/abs/2005.11401
[S7] Anthropic, Introducing Contextual Retrieval — https://www.anthropic.com/news/contextual-retrieval [S12] デジタル庁, DS-920 行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(2026年6月12日) — https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/decb64eb-f26e-41cb-8d37-f3dd173108b8/59054b35/20260612_resources_standard_guidelines_guideline_01.pdf

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